地元の名産品・特産品を販売するECサイトのフルリニューアルを、過去にこれまで複数回にわたって担当してきました。まだ「モバイルファースト」という言葉が一般化する前の時代から、最新トレンドを取り入れた改修まで、一貫してプロジェクトマネージャーとシステムエンジニアの両方を兼任してきたため、様々なアプローチや成果を得られています。今回は、2006~2013年当時の総括的な内容をお伝えしつつ、特に印象的だったフルリニューアルプロジェクトを事例として紹介します。
なぜリニューアルが必要だったのか
このECサイトは2001年ごろから運営が始まり、ディスプレイ解像度が640×480ピクセルを想定していた時代のデザインがベースでした。運営を続ける中で部分的な修正は加えられていたものの、高解像度モニターやスマートフォンへの対応が十分ではなく、抜本的なリニューアルが求められていました。
- PC専用サイトのみでモバイル対応が不十分
- 古い画像解像度のまま運用
- 管理画面の複雑化が進み、ECサイト担当者が日々ストレスを抱えていた
- かご落ち率の高さが売上にも影響
リニューアルのたびに、こうした課題を洗い出しては問題を解消し、さらに新しい機能を導入してきたことが、サイト全体の進化につながっています。
プロジェクトの目的
何度か行われたリニューアルの中でも、特に大きなアップデートを行った際の主な目標は以下のとおりです。
- お客様のUI/UX向上
- PC・スマートフォンの両方で快適に利用できるレスポンシブデザインの導入
- レコメンド機能やお客様の声を加え、購入意欲を高める
- 決済フローの最適化で、かご落ち率を低減
- 運営担当者のUI/UX向上
- 5年以上未改善だった管理画面をゼロから再設計
- 多機能になりすぎたメニューを整理し、業務効率アップ
- スタッフの意見を取り入れながら、使い勝手を最優先に
- 売上向上
- 画像やデザインの刷新で商品価値をしっかり伝える
- かご落ち率を減らし、コンバージョン改善につなげる
開発期間と時代背景
- 開発期間:半年(大規模リニューアル時)
- 当時の状況:ガラケーの利用がまだ多く、スマートフォンが徐々に普及し始めたころ
- 導入技術:当時まだ珍しかったレスポンシブWebデザインをいち早く採用し、モバイル普及を見据えた構築を実現
リニューアルを重ねるたびに、最新の開発手法やデザイン潮流を取り入れてきました。
リニューアルの内容
- デザインの刷新
- 従来の640×480ピクセル対応からHD(1280×720ピクセル)対応へ大幅拡張
- スマートフォンやタブレットでも最適に表示されるレスポンシブデザイン
- 高解像度の商品の画像を追加し、魅力を最大限にアピール
- フロント側機能の追加・改善
- レコメンド機能やお客様の声を導入し、購入検討時の信頼性を高める
- 買い物かご・決済フローの見直しでかご落ち率を削減
- 機能拡張やUI向上を繰り返しながら、ユーザビリティを継続的に向上
- 管理画面の再構築
- 従来の管理画面は5年間にわたる機能追加で複雑化
- 各リニューアル時に、担当者へのヒアリングを徹底して目的の機能に辿り着きやすいUIを実現
- PC版のみを対象に、画面レイアウトやナビゲーションを大幅に刷新
私の役割とチーム構成
私は、すべてのリニューアルプロジェクトにおいてプロジェクトマネージャーとシステムエンジニアを兼任しました。特に大規模な改修では、以下のタスクを担当し、チーム全体をリードしています。
- スケジュール立案、進捗管理、リスク管理、ステークスホルダーとの連携
- 要求仕様書、基本設計書、画面詳細図、テスト仕様書の作成
- ECサイトスタッフやステークスホルダーとの定期的な打ち合わせ
- ヤマト運輸、三菱UFJ銀行など外部との仕様連携
- 商品ページのキービジュアル作成(デザイナーとの協働)
チームメンバーにはプログラマ(DB・フロント・バックエンド担当)やデザイナーが加わり、ECサイト担当者からの要望をベースに、最適な仕様へと落とし込んできました。
トラブルや問題点
基本的に、徹底した準備とヒアリングを行っていたため、大きなトラブルはありませんでした。リニューアルのたびに、プロジェクト開始前の要件整理とリスクヘッジを徹底してきたことが功を奏しています。
- 細かい仕様変更は早期に共有し、クライアント側と随時合意形成
- 外部連携(決済、配送など)も工程の初期段階でスケジュールに組み込み、余裕をもたせる
リニューアルの成果
- かご落ち率の改善
- 決済フローの見直しやUI改善で、スムーズな購入をサポート
- 表示速度とユーザビリティの向上
- レスポンシブ対応とコード最適化により、読み込み速度を改善
- スタッフの満足度アップ
- 管理画面が劇的に使いやすくなり、日々の運営ストレスが低減
各回のリニューアルに共通して言えるのは、事前の要件整理とステークスホルダーとの丁寧なコミュニケーションによって、ユーザーだけでなく運営担当者にもメリットをもたらすサイトが構築できたという点です。
まとめ
このECサイトは、長期運用の中で複数回にわたる大規模リニューアルを経験し、そのたびにデザイン・機能・管理画面を最適化してきました。私はすべてのリニューアルに同じ役割で携わり、最初のころはまだ珍しかったレスポンシブデザインの導入や、管理画面の抜本的な再設計など、多くのチャレンジを行うことでかご落ち率の大幅削減やスタッフの満足度向上を実現しました。
- ポイント1:ユーザーと運営担当者、両面のUI/UXを常に意識
- ポイント2:設計段階から外部連携や追加要件を取り込み、リスクを最小化
- ポイント3:定期的なリニューアルを繰り返すことで、サイトの価値を継続的に向上
今後も、時代の流れやユーザーニーズに合わせてサイトのアップデートが必要になるでしょう。そのときも、この経験を活かして、双方にとってストレスなく使えるECサイトを目指していきたいと思います。