はじめに
私は20年の経験を持つシニアクラスのエンジニアで、その大半をプロジェクトマネージャー(PM)やシステムエンジニア、ディレクターとして過ごしてきました。具体的には、ステークホルダーとの折衝や要件定義、チームミーティングの運営、スケジュール管理、仕様書の作成などを得意としています。
一方でキャリアの初期は、全国ネットの資格スクールでパソコン講師を務めるところからスタートし、この分野でも10年以上の実務経験を積んできました。2年前までは企業研修や雇用訓練スクールの講師も並行して担当していました。
プロジェクトマネージャーとパソコン講師というと、一見するとまったく異なる職種に思われるかもしれません。しかし、両方を経験した私の視点から見ると、意外なほど多くの共通点、特に「人を導く」というヒューマンスキルで大きな類似性があることに気づかされました。これは最近、インターンシップに参加し、就職活動を行う中で、改めて実感したものです。
私が考える「プロジェクトマネージャー」
まず、私が考えるPM像を明確にするため、以下の5つのポイントを挙げたいと思います。
- チームメンバーに信頼され、頼りにされるPM
- チームのモチベーション向上に貢献する
- チームが働きやすい環境づくりを実現する
- 課題やトラブルはチームで相談し、解決策を練る
- 全てのプロジェクトに全力投球する
これらは私が就職活動を行う際、自分のPM観をブレなく再認識するためにリストアップしたものです。
そして改めて眺めてみると、この5つの要素を自分がしっかりと実践できている背景には、エンジニアとしての経験だけでなく、パソコン講師時代に培った「人を育て、支える」ヒューマンスキルが大いに活きていることに気づきました。
結局のところ、「人を導き、成果を出すための環境を作る」という点で、プロジェクトマネージャーとパソコン講師の根っこは同じなのだと思っています。
そこで、もう少し踏み込んで、この2つのキャリアに共通する5つのヒューマンスキルを整理してみました。
1. コミュニケーション能力の重要性
両職種において、効果的なコミュニケーションが不可欠なのは言うまでもありません。
- チーム/受講生の理解度に合わせた説明力
たとえば開発プロジェクトであればメンバーによって得意領域やバックグラウンドが異なり、講師であれば受講生のレベルや目的も多種多様です。そこに合わせて説明の仕方や使う言葉を調整する力が求められます。 - 的確な質問と傾聴スキル
プロジェクトでも講義でも、本質的な課題や理解不足の原因を見極めるには、相手の言葉をしっかり聞き、要点を引き出す質問が鍵となります。 - 複雑な概念をわかりやすく伝える能力
ITシステムの仕様説明や新しいソフトウェアの操作方法など、専門的な知識をわかりやすく噛み砕いて説明する必要があります。多くの場合、これを「誰にでも伝わる形」に落とし込むのは簡単ではありませんが、コミュニケーション能力が高いとその難度が大きく下がります。
2. 人々の成長をサポートする役割
プロジェクトマネージャーもパソコン講師も、最終的には「人の成長を支援する」という役割を担っています。
- 個々の強みと弱みを理解し、適切なアプローチを選択
PMの立場であれば、メンバーの適材適所を考えてタスクを割り振り、講師であれば受講生一人ひとりに合った学習法を探ります。 - モチベーション管理と維持
新規プロジェクトの立ち上げ時や研修の初期段階はモチベーションが高くても、時間が経過するにつれ低下することもあります。そこをいかに継続的に高め、維持するかが重要です。 - 成功体験の提供とフィードバック
小さな成功体験を積み重ね、適切なフィードバックを与えることで、学習効率もチームのパフォーマンスも飛躍的に高まります。
3. 問題解決能力
予期せぬトラブルが起きるのはプロジェクトでも講義の現場でも同じです。そこにどう対処するかは、リーダーや講師の腕の見せ所です。
- 状況の迅速な把握と対応
システム障害が起こる、あるいは講義中にPCの動作がおかしくなるなど、現場では常にイレギュラーが起きる可能性があります。いかに早く状況を把握し、対策を講じられるかが信頼を左右します。 - 柔軟な思考と解決策の提案
「想定外」はプロジェクトでも研修でも日常茶飯事です。解決策がひとつとは限らないので、複数のオプションを瞬時に考え、最適な方法を選ぶ判断力が求められます。 - リソースの効果的な活用
制限された人員・予算・時間の中で最大限の成果を上げるために、現場での機転やリソース配分は重要なポイントになります。
4. 計画立案とタイムマネジメント
効率的に物事を進めるうえで必要不可欠なスキルです。プロジェクトも講座も、限られた期間やリソースで成果を出さなくてはなりません。
- 目標設定と進捗管理
マイルストーンやゴールを明確に設定し、それをチームや受講生全体に共有することで迷いを減らします。 - 時間配分の最適化
タスクに優先度を付け、実行計画を立てるのはPMの基本的な責務でもありますし、講師も講義全体のカリキュラムを最適化する必要があります。 - 優先順位付けとスケジュール管理
進捗の遅れは品質低下やリスク増大に直結するため、常に状況を見ながらスケジュールをコントロールする意識が欠かせません。
5. 共感力とリーダーシップ
「人を動かす」という点では、共感力とリーダーシップは欠かせない要素です。
- 個々の不安や懸念への対応
チームメンバーも受講生も、壁にぶつかったときには不安を抱えやすいものです。その気持ちを汲み取り、適切なアドバイスや解決策を提供することで、信頼関係が強まります。 - 信頼関係の構築
リーダーや講師が言うことだからこそ「聞いてみよう」「ついていこう」と思ってもらえるかどうかは、日頃の姿勢や言動、つまり人間力が試される部分です。 - モチベーションの維持と向上
リーダーが真剣に取り組めば、チームは自然と巻き込まれ、講師が楽しそうに教えれば受講生も前向きな姿勢で取り組みます。やる気を高める仕掛けづくりは重要です。
まとめ
以上の5つのスキルから分かるように、プロジェクトマネージャーとパソコン講師はともに「人」にフォーカスした仕事であると言えます。技術的なスキルや知識は確かに重要ですが、最終的に成果を生むのは「人をどれだけ動かせるか」「人をどう育て、支えられるか」にかかっています。
私自身、PMとしてのキャリアを追求する中で、かつて講師として経験した「受講生を育成する」という視点が大いに役立っていることを実感しています。人材育成やチームマネジメントに関わる場面では、こうした両面の経験が非常に価値を持つのだと再認識しました。
このように、プロジェクトマネージャーとパソコン講師の間には想像以上に多くの共通点があります。私にとっては2つのキャリアを並行して積んできたことで、PMとしてのスキルセットにより深い自信を持てるようになりました。そして、今後も「人を育てる力」を軸に、チームや組織を成功へと導くマネジメントを実践していきたいと思っています。